外部の専門業者に制作を依頼するとき、金額・納期・仕上がりには注意していても、「納品後に自社でどこまで使えるのか」「契約が終わった後も使い続けられるのか」といった点は意外と見落とされがちです。
「お金を払ったのだから自由に使えるはず」と考えがちですが、外注先が著作権を持ったまま納品する場合もあり、利用範囲や修正の可否は契約内容によって大きく異なります。
外注契約は「作ってもらうための契約」ではなく、「納品後に自社が安心して使い続けるための契約」です。
発注前に確認すべき5つのチェックポイントを整理しました。規模の大小にかかわらず、メールや発注書で確認できる形で残しておくだけで、後のトラブルを大きく防ぐことができます。
① 元データは受け取れるか
② 納品後に自社や別業者が修正・改修できるか
③ 契約終了後も使い続けられるか
④ 自社が渡した情報はどう管理されるか
⑤ 外注先は実績として公表できるか
① 元データは受け取れるか
「Webサイトを作ってもらった」と思っていても、受け取るのが公開ページだけという場合があります。
デザインデータ・コード・管理画面のID・操作マニュアルなど、事業上必要な要素は多岐にわたります。パンフレットや営業資料ならIllustratorやPowerPointの編集データ、システムなら仕様書や設計書が「元データ」にあたります。一回限りのイベント告知チラシなら完成版PDFだけで足りる場合もありますが、繰り返し使うものや更新が前提のものは元データが必要です。
会社案内・商品カタログ・Webサイト・継続的に改訂するマニュアルなど、長期にわたって使うものは特に注意が必要です。事業を続けていれば、価格改定・法改正・担当者変更など、資料を更新する場面は必ずやってきます。外注先が廃業する、別業者に切り替えたいといった事情が生じたとき、元データがなければ最初から作り直すことになりかねません。「何を・どの形式で納品してもらうのか」を、契約前に発注書や契約書に具体的に書いておきましょう。
② 納品後に自社や別業者が修正・改修できるか
元データを受け取れても、それだけでは十分ではありません。自社で修正してよいか、別業者に改修を依頼してよいかという「修正・改修の自由度」も重要な確認事項です。契約によっては、外注先以外への改修依頼を禁じていたり、自社が修正した場合に保証が失われる条件になっていたりすることがあります。資料やコンテンツは納品後に更新することが前提です。
システムの場合、外注先にすべてを任せきりにしていると「ベンダーロックイン」の問題が生じ、後から外注先を変更できなくなることがあります。
また、Web用に作った画像を後から広告や印刷物に転用したいと思っても、利用範囲が契約で限定されていれば追加費用や制限が発生します。修正・改修の権限と利用できる範囲を、あわせて確認しておきましょう。
③ 契約終了後も使い続けられるか
外注契約は、始めるときよりも終わるときに揉めることがあります。
「保守契約を終了したらシステムが使えなくなった」「サーバーの管理権限が移転されなかった」「データの引き渡しに予想外の費用と期間がかかった」「引継ぎに協力してもらえなかった」といった問題は、契約終了時に初めて表面化します。
Webサイト・予約システム・顧客管理システムなど、業務に組み込まれているものほど、終了時のルールを事前に取り決めておく必要があります。業務データを自社で取り出せるか、移行にかかる費用はどの程度か、引継ぎに協力してもらえるか。
「終了時のことはそのときに考えればいい」と思いがちですが、そのときになって初めて不利な条件に気づくことが多いものです。
④ 自社が渡した情報はどう管理されるか
外注先に渡す顧客リスト・技術資料・未公開の商品情報などは、流出すれば事業に直結する損失になります。「外注先だから当然守ってくれるだろう」では不十分で、外注先がさらに別業者に再委託しているケースもあります。
どこまで情報が共有されるのか、再委託先にも秘密保持義務を負わせているかを確認しておくことが大切です。
秘密保持契約または外注契約の中で、目的外利用の禁止・第三者への開示禁止・再委託先への提供条件・契約終了後の返還と削除・漏えい時の報告義務を定めておきましょう。
NDAは情報提供を開始する前に取り交わすことが重要です。情報を渡してしまった後では、秘密保持の効力に疑問が生じることがあります。
⑤ 外注先は実績として公表できるか
外注先が制作実績をSNSや自社サイトで紹介することがあります。外注先にとっては自然な営業活動ですが、未公開の商品情報が含まれている、新サービスの公開前である、取引先名を公表したくない、競合他社に制作内容を知られたくないといった場合には制限が必要です。
新商品・採用サイト・システム開発など、情報の取り扱いに慎重さが求められる分野では特に意識すべきポイントです。
発注者の事前承諾がある場合に限り公表できる、会社名を伏せた形に限る、公表時期を発注者が指定するといった条件を契約書に明記しておきましょう。
これは外注先の信頼を疑うためではなく、公表のタイミングと範囲を発注者が適切にコントロールするための取り決めです。
まとめ
「お金を払ったから大丈夫」「納品されたから問題ない」という思い込みは、後から大きなトラブルの原因になることがあります。外注契約は「作ってもらうための契約」ではなく、「納品後に自社が安心して使い続けるための契約」です。
チラシやSNS用画像といった小さな外注でも、Webサイトやシステムの大きな案件でも、この5つのポイントは共通して重要です。分厚い契約書は不要でも、メールや発注書で確認できる形で残しておくだけで、後のトラブルを大きく防ぐことができます。発注前の短い確認が、納品後の長い安心につながります。
今回の5つのチェックポイント
① 元データは受け取れるか
② 納品後に自社や別業者が修正・改修できるか
③ 契約終了後も使い続けられるか
④ 自社が渡した情報はどう管理されるか
⑤ 外注先は実績として公表できるか
外注契約は、金額と納期だけで判断してはいけません。自社の事業に使い続けるものほど、契約前の確認が重要です。
シリーズ記事との関係
本記事は、「中小企業のための知財戦略・最初の5ステップ」シリーズの合間に掲載する企業法務記事です。第1回では、自社の知財を見える化する「知財の棚卸し」について取り上げました。その中でも、外注先に関係する成果物や資料は、実務上、特に確認が必要な分野です。今回は企業法務の視点から、外注契約で確認すべき納品物・データ・契約終了後の扱いを整理しました。
次回のシリーズ本編では、いつ知的財産権を取得すべきかという、知的財産権取得時期について取り上げる予定です。
今回の記事の内容は、下記の動画でも解説しています。

