デザインはどう守る? | 立体的な製品形状は、まず意匠権を考える

商品のデザインは、単なる「見た目」ではありません。

持ちやすい形、注ぎやすい形、店頭で目を引く形、一度使った人が次も同じ商品だと分かる形。こうした立体的な製品形状は、商品の使いやすさやブランドイメージに直結します。特に中小企業やスタートアップにとっては、製品そのものの形が競争力になることも少なくありません。

では、こうした「物のデザイン」は、どのように守ればよいのでしょうか。

結論からいえば、立体的な製品形状を事業上守る場合、まず意匠権を考えるのが基本です。

著作権や商標も重要な制度ですが、工業製品や実用品の形状を守る場面では、意匠権を中心に考える必要があります。以下、その理由を順に説明します。

目次

1 良いデザインは模倣されるリスクがある

良い製品デザインを開発するには、時間も費用もかかります。形状を決めるまでには、試作・検討・改良・ユーザーテスト・製造上の調整など、多くのプロセスがあります。

ところが、商品が市場で評価されると、似たような形の商品が出てくることがあります。

問題は、模倣されると「二重の損失」が生じる点です。

  • 開発投資の回収が難しくなる
  • 自社の広告宣伝効果が類似品の購入に流れてしまう(広告ROIの低下)

自社が費用をかけて認知度を上げても、その効果が模倣品の売上につながってしまうのです。模倣品が出ると、単に売上が奪われるだけではありません。だからこそ、事業上重要なデザインについては、早い段階で知的財産権による保護を考える必要があります。

2 工業デザインの保護は、意匠権が本筋

知的財産権にはさまざまな種類がありますが、立体的な製品形状を守る制度として中心になるのが意匠権です。

意匠権は、物品などの形状・模様・色彩、またはこれらの組合せを保護する制度です。製品の外観に現れたデザインを、出願・審査・登録によって権利化します。

たとえば、次のようなものが意匠権の検討対象になります。

  • 製品本体の形状
  • 容器・パッケージの立体的な形状
  • 部品の外観
  • 注ぎ口や持ち手など、特徴的な部分の形状

意匠権は、著作権のように「これは著作物といえるか」という不安定な議論に頼るのではなく、登録によって権利が確定します。そのため、工業製品や実用品のデザインを事業上守るには、まず意匠権を検討することが基本です。

3 著作権で工業デザインを守るのは難しい

「著作権で守れるのではないか」と考える方も多いと思います。たしかに、イラスト・写真・文章・動画などは著作権で保護される典型例です。しかし、量産される実用品の形状に著作権の保護を求めることは、相当ハードルが高いといえます。

実用品の形状は、美しさだけでなく、使いやすさ・機能・強度・製造コストと結びついています。裁判例をみても、工業的・実用的な造形物への著作権適用には厳しい判断が続いており(近時の最高裁判決)、著作権だけで立体的な製品形状を守ろうとするのは現実的ではありません。

4 商標(立体商標)でも最初から守るのは難しい

では、商品の形を商標で守ることはできないでしょうか。

商品の立体的な形状が商標(立体商標)として登録される場合はあります。しかし、これも簡単ではありません。

商標は、本来、商品やサービスの出所を示す「目印」を守る制度です。商品名やロゴであれば、商標登録を検討することが重要です。

一方、商品の形そのものは、最初は「ブランドの目印」というより、単なる製品デザインや機能的な形として受け取られるのが通常です。立体的な形状を商標として登録するには、その形を見ただけで特定の会社の商品だと分かる程度の認知が必要になることがあります。

立体商標は、商品が長く販売されて形状がブランドとして認識された段階で検討する制度です。 最初から商品の形を商標で守るという発想は、現実的でない場合が多いでしょう。

5 意匠権は、特許権を補完することもある

意匠権は、単に「見た目」を守るだけの制度ではありません。技術的な工夫と外観上の特徴が結びついている商品では、特許権を補完する役割を果たすことがあります。

たとえば、ある容器について次のような特徴があるとします。

  • 中身を出しやすく、液だれしにくい
  • 片手で扱いやすい
  • 使用後も清潔に保ちやすい
  • 店頭で見つけやすい形をしている

このような商品では、技術的なアイデアは特許権で守り、消費者の目に触れる容器の外観・注ぎ口の形状・全体のシルエットは意匠権で守る、という組合せが考えられます。

実際、日用品や食品関連商品の分野では、機能を実現する形状そのものが外観上の特徴となり、技術とデザインが一体となって商品の価値を構成していることがあります。このような場合、意匠権は特許権と並んで、商品保護の厚みを増す手段になります。

6 ただし、意匠権も万能ではない

もっとも、意匠権であれば何でも登録できるわけではありません。意匠登録には一定の要件があります。

  • 工業上利用できる意匠であること
  • 新しいデザインであること(新規性)
  • 容易に創作できたものではないこと(創作非容易性)
  • 先に出願された意匠と重複しないこと

特に注意が必要なのは、ありふれた形状、既に公表されているデザインに類似した形状、機能上ほとんど選択の余地がない形状などは、登録が難しいことがあるという点です。

また、タイミングも重要です。 出願前にデザインを公開してしまうと、原則として新規性を失うおそれがあります。展示会への出品、クラウドファンディングでの公開、ウェブサイトやSNSへの掲載、カタログの配布なども、公開にあたる場合があります。

一定の場合には新規性喪失の例外制度を利用できますが、手続や期限の制約があります。重要なデザインについては、公開前に意匠登録出願を検討するという発想が必要です。

このように意匠権も万能ではないからこそ、製品開発の早い段階で、この形状は意匠として出願する価値があるか、どの部分を権利化すべきかを専門家に相談して検討することが大切です。

まとめ――物の形は、まず意匠権を考える

立体的な製品形状は、企業の競争力になります。しかし、良いデザインを開発しても、何もしなければ模倣されるリスクがあります。模倣品が出ると、開発費の回収が難しくなり、自社広告の効果が類似品に流れてしまう(広告ROIの低下)という二重の損失が生じます。

こうした損失を防ぐため、知的財産権による保護が重要です。工業デザインの保護は、意匠権が本筋です。

著作権だけで実用品の形状を守ろうとするのは不安定であり、立体商標として商品の形を最初から守るのも容易ではありません。一方、意匠権は製品の外観に現れたデザインを正面から保護する制度であり、技術的な工夫と組み合わせれば特許権を補完する役割も果たします。

ただし、意匠権の取得には要件があり、公開前に手を打つことが重要です。

重要なデザインについては、公開前に、意匠権で守るべきか・どの形状を権利化すべきかを検討してください。

デザインを守ることは、単に見た目を守ることではありません。開発投資を守り、模倣を防ぎ、将来のブランドを育てるための、重要な知財戦略です。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法律相談ではありません。

この記事の内容は、下記の動画でも説明しています。

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