外注したロゴやイラストは誰のもの?【発注前に知っておきたい著作権の基本】

目次

はじめに ― 「お金を払ったのに、使えない」

ある会社が、創業5周年のタイミングでロゴをリニューアルしました。

デザイン会社に依頼し、代金を支払い、データを受け取りました。

ところが1年後、そのロゴを商標登録しようとしたとき、問題が発覚します。

著作権が、制作会社側に残ったままだったのです。

商標登録の手続きを進めるには、著作権者の同意が必要になる場合があります。連絡したところ、制作会社はすでに担当者が退職しており、対応に時間がかかる……。

こうしたトラブルは、珍しいことではありません。

本記事では、ロゴやイラストを外注するときに知っておきたい著作権の基本を整理します。

「代金を払えば著作権が移る」は誤解

ロゴやイラストは、著作物にあたる場合があります。

著作権は、その作品を創作した人に発生します。

つまり、外部のデザイナーにロゴやイラストを作ってもらった場合、契約で明確に定めていなければ、著作権は制作者側に残ります。

代金を支払ったことと、著作権が移転したことは、法律上、別の問題です。

トラブルになりやすい場面

著作権が制作者側に残ったまま放置されていると、次のような場面で問題が起きることがあります。

ロゴ・ブランドの場合

  • 色や形を少し変えたい
  • 縦・横など別バージョンを作りたい
  • グループ会社でも使いたい
  • 商標登録したい

イラスト・画像の場合

  • 当初はチラシ用だったが、ホームページにも使いたい
  • SNS広告にも展開したい
  • 商品パッケージにも載せたい
  • 海外向けの資料にも使いたい

いずれも、契約でどこまで取り決めていたかによって、できるかどうかが変わってきます。

著作権譲渡か、利用許諾か

デザインを外注するとき、まず確認すべきことがあります。

著作権を譲渡してもらうのか、それとも一定の範囲で使う許可をもらうだけなのか。

この違いは非常に重要です。

著作権譲渡

著作権そのものを制作者から発注者へ移す契約です。

会社のロゴ、ブランドのメインビジュアル、商品パッケージ、長期的に使うキャラクターなどは、著作権譲渡を受けておきたい場面が多いです。これらは会社の事業やブランドの中心になることがあるからです。

契約書で「著作権を譲渡する」と定める場合でも、注意が必要です。
後からロゴを加工したり、イラストを別の媒体で展開したりする場面では、著作権法第27条の権利、つまり翻案権などの「作品を加工・改変するための権利」や、第28条の権利、つまり加工・改変された作品を利用する、二次利用に関する権利が問題になることがあります。
そのため、実務上はたとえば次のような条項を入れることがあります。

著作権法第27条及び第28条の権利を含む一切の著作権を譲渡する

利用許諾

著作権は制作者側に残したまま、発注者が一定の範囲で使うことを認めてもらう契約です。

一回限りのチラシ用イラスト、期間限定キャンペーンの画像、社内資料の挿絵などは、利用許諾でも足りる場合があります。

ただし、利用許諾の場合は、どこまで使えるのかを具体的に決めておく必要があります。

使用できる媒体(Web・SNS・印刷物・広告・商品)、使用期間、使用地域、改変の可否、グループ会社での利用可否――これらを曖昧にすると、後から「その使い方は認めていない」と言われることがあります。

著作者人格権にも注意

著作権とは別に、著作者人格権にも注意が必要です。

著作者人格権は、著作者の人格的利益を保護する権利で、代表的なものに「同一性保持権」があります。これは、作品の内容や表現を、著作者の意に反して勝手に変えられない権利です。
ここで重要なのは、著作者人格権は譲渡できないという点です。

著作権を譲渡してもらったとしても、著作者人格権は制作者側に残ります。

たとえば、ロゴの色を変えたり、一部をトリミングしたり、文字を追加したりすると、場合によっては同一性保持権との関係で問題になることがあります。

そのため、実務上は契約書に次のような条項を入れることがあります。

受託者は、発注者及び発注者が指定する者に対し、著作者人格権を行使しないものとする。

著作権譲渡の合意だけで安心してしまうのは危険です。

ロゴの場合は商標登録も視野に

ロゴを外注するときは、著作権だけでなく、商標登録との関係も意識しておく必要があります。

ロゴは一度使い始めると、名刺・看板・Webサイト・広告など、さまざまな場所に広がっていきます。後から変更するのは、時間も費用もかかります。

発注段階で確認しておくべきポイントとして、次のようなものがあります。

  • ロゴの著作権が発注者に移るか
  • 商標登録を予定していることを制作者と共有しているか
  • 第三者の素材・フォントを無断で使っていないか
  • 既存のロゴやキャラクターに似ていないか

ロゴの中に既存の素材・アイコン・フォントなどが含まれている場合、その利用条件によっては商標登録や商品展開に支障が出ることがあります。

契約書で確認すべき7つのポイント

デザインを外注するときは、少なくとも次の点を契約書で確認しておくと安心です。

1. 著作権の扱い(譲渡か利用許諾か)

ロゴや重要なブランド素材なら著作権譲渡を。単発イラストなら利用許諾でも足りる場合があります。

2. 利用範囲

Web・SNS・広告・印刷物・動画・商品・海外利用・グループ会社利用など、使い方をできるだけ具体的に。

3. 改変の可否

色変更・トリミング・サイズ変更・文字追加・別媒体への展開ができるかを確認します。

4. 著作者人格権の不行使

著作権譲渡を受けても、著作者人格権は別途合意が必要です。不行使条項を明記しましょう。

5. 第三者素材の有無と利用条件

写真・イラスト・アイコン・フォント・テンプレートなどが含まれている場合、その利用条件の確認が必要です。

6. 商標登録の可否

ロゴを商標登録する予定があれば、最初からその前提で作ってもらう必要があります。

7. 納品データの範囲

完成画像(PNG・JPEG)だけでよいか、編集可能な元データ(AI・PSDなど)も必要かを決めておきます。

まとめ

デザインは、会社の印象やブランドを形づくる重要な資産です。

しかし、「お金を払ったから自由に使える」は、法律上、必ずしも正しくないという点は、発注の前に理解しておく必要があります。

著作権を譲渡してもらうのか、利用許諾にするのか。著作者人格権の不行使について合意するか。商標登録は視野に入っているか。第三者素材は含まれていないか。

これらを曖昧にしたまま発注すると、後から思わぬトラブルになることがあります。

発注段階で少しだけ確認する手間が、大きなリスクを防ぎます。

おわりに

本記事の内容は、動画でも解説しています。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の事案については、専門家にご相談ください。

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